こんにちは、みなさま。
臨床心理士と公認心理師をやっております、『トアルしんりし』と申します。
現在、婚活で出会った会社員の伴侶と発達障害(自閉スペクトラム症と中度知的障害)もちの4歳・娘と3人で暮らしています。
☞このブログでは…トアルしんりしが子育て中に自然に感じること、考えることの内容が、もしかしたら、この世界のどこかで過ごす人にとって〈新たな視点〉となって、何かしらお役に立つこともあるかもしれないと思って運営しております!
今回は、『こんな質問をよくうけますシリーズ』の第5弾です。
一般的に疑問として思われる心理職の守秘義務について、タラソフ判決の情報と絡めながらみなさまにご紹介しようかと思います。
☞ちなみに、このシリーズの過去記事(第4弾)はこちら↓
気になった方はお時間の許す限りで結構ですので、読んでいただけますと幸いです♪
こんな質問をよくいただきます~守秘義務について~
「『これ、絶対に言わないで!』って言われたら、どうするの?」
👆自然なことですが、よくこのご質問はでるかと思います。
プライベートの友人・知人にも聞かれるくらいに、多くの人が気になる点なのだと思います🙂
その内容によって、心理職の守秘義務のあり方はかわってきますので、一般的によく扱われる内容(書籍などにも書かれるような、一般化された内容として例に出しています。実際の相談内容をここでは公表していません)をもとに、その場合に心理職としてどのような応対をするのかということや、その理由などを今回はご紹介していきたいと思います。
自傷他害にかかわる内容であった場合は?
例えばですが・・・
「死にたいと思って、この前、こんなことしちゃった(リストカットの画像を見せる)」
「もういつでも、電車とか、ビルとかから飛び降りたってよいかな~と思って」
「もう限界です。アイツが憎い・・・この手でアイツの人生を終わらせたい」
といった、自傷他害(自分を傷つけることや他者を傷つけること)の恐れが考えられる内容は、基本的に、心理職はこのように応対するようになっています↓
応対の仕方
結論:『あなたの命を守るため』『命にかかわることだから』・・・言わないで欲しいという気持ちはこちらでも十分に理解できますが、申し訳ないですが、命にかかわるという、これは言わなければいけないことなんです、といった内容の話をまずはさせていただきます。 その上で、自傷他害の話をしたご本人とその後話しながら、【誰に・どのように・どんな内容を】伝えていくかといったことを共有していきます。 なお、共感的姿勢と傾聴は基本的に持ち続けながらそれらを行っていきます。
☞あまり具体的な言葉をつかって表現できていないかと思いますが・・・ケースバイケースでの応対の仕方があるため、『こういうやり方で絶対OKと言い切れない』のが現実です💦💦💦
しかし、自傷他害の恐れがある・そのリスクが高い内容を聞いた際は、公認心理師や臨床心理士はおおむねこの応対をとることになってくる、という理解でいていただけると有り難いです。
☞では、何故そんな応対になってくるのか?
次に、その理由を心理職業界では超がつくほど有名なタラソフ判決などの情報と共にご説明していきたいと思います。
その理由
ここでご紹介したいのが、心理職(カウンセラー)の倫理に関して改めて重要視されるようになった事件であり、一般的にも『タラソフ判決』と呼ばれたものです。
☞守秘義務とタラソフ判決をまとめたこちらのサイトでは、事件概要をこのようにご紹介しています↓
1976年にカリフォルニア大学病院の精神科に通院し治療を受けていたポダーという男性が、タチアナ・タラソフさんという女性に恋愛感情を抱きました。が、彼女はその愛情を拒否し、ポダーは「タラソフを銃で撃つ」と殺害する旨を主治医のモーレ医師に診察中に告白しました。しかしモーレ医師は守秘義務のためそれを口外しませんでした。そして診察室での予告通り、ポダーはタラソフさんを殺害してしまい、その後、タラソフの両親がモーレ医師を訴えます。
この裁判は結局最高裁まで争われ、裁判所は治療者に対し、被害者に警告の義務を含む第三者保護義務を認めました。
~守秘義務とタラソフ判決とキャリアコンサルティングより一部抜粋にて引用~
☞つまり、タラソフ判決以降の治療者である専門家は、以下の義務が求められています。
1 犠牲者となり得る人に対して、その危険について警告する
~守秘義務とタラソフ判決とキャリアコンサルティングより一部抜粋にて引用~
2 犠牲者となり得る人の家族や友人などに警告する
3 警察に通告する
4 その他、必要と判断される方法を、どんな方法でも実行する
👆これは、上記サイトでも指摘されていますが・・・タラソフ判決での治療者の義務は、日本臨床心理士会の倫理綱領の第4条であるインフォームド・コンセントにも反映されています。以下に引用いたします↓
第4条 インフォームド・コンセント
会員は,業務遂行に当たっては,対象者の自己決定を尊重するとともに業務の透明性を確保するよう努め,以下のことについて留意しなければならない。(略)
4 自他に危害を与えるおそれがあると判断される場合には,守秘よりも緊急の対応が優先される場合のあることを対象者に伝え,了解が得られないまま緊急の対応を行った場合は,その後も継続して対象者に説明を行うよう努める。
~一般社団法人日本臨床心理士会倫理綱領より一部抜粋にて引用~
☞そして、法律の方が倫理要綱より優先されるのですが・・・今回は、上述サイト(守秘義務とタラソフ判決とキャリアコンサルティング)で取り上げられている【児童虐待防止法】【高齢者虐待防止法】【障害者虐待防止法】【配偶者暴力防止法(DV防止法)】について、サイト参照をした上で改めて守秘義務との兼ね合いを記載しました↓
- 児童虐待防止法<第6条より>→「児童虐待を受けたと思われる児童」を発見した場合は、守秘義務をこえて、通告義務が生じます
- 高齢者虐待防止法<第7条より>→「当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合」は、守秘義務をこえて通告義務が生じますが、それ以外は努力義務とのこと
- 障害者虐待防止法<第7条より>→「障害者虐待を受けたと思われる障害者」を発見した場合は、守秘義務をこえて、通告義務が生じます
- 配偶者暴力防止法(DV防止法)<第6条より>→「配偶者からの暴力(配偶者又は配偶者であった者からの身体に対する暴力に限る。以下この章において同じ。)を受けている者」を発見した場合は、通報は努力義務となり、通告には「その者の意思を尊重するよう努めるものとする」とのこと
☞つまり、【児童虐待】【高齢者虐待】【障害者虐待】【配偶者暴力(DV)】の点に触れる自傷他害の内容に関しては、場合によっては(ケースバイケース)で守秘義務が解除されるということなんですね。
自傷他害にかかわる内容以外であった場合は?
自傷他害(自分を傷つけることや他者を傷つけること)の恐れが考えられる内容以外は、基本的に、心理職はこのように応対するようになっています↓
応対の仕方
結論:「原則、この場で話された内容は、外に漏れることはありません」「秘密は守ります」「カウンセリング情報(相談内容)を他機関やしかるべき場所(病院、役所、学校、専門職間のケース会議など)にお伝えする必要性が出てきた場合は、事前に必ず相談者ご本人に同意をとってから行います」などの説明を必ず行います。 もちろん、自傷他害の恐れがある場合はその限りではない(守秘義務が守り切れなくなること)ということもお伝えした上で、同意書に相談者のサインをもらいます。
☞おおむねこういった内容の話をしていくかと思います。
所属する機関によって、同意書(面接契約書など)の内容に関しては多少の違いがみられるかもしれませんが・・・
「基本、相談内容は不用意に外部に漏れることはありません(自傷他害のリスクが高いと判断されないかぎり)。それ以外の場合は、必ず情報をどういうところに出して良いかといった相談を事前に同意をとりますので、ご安心ください」
ということを相談者(患者)の方には伝える形となります。
その理由
上記の結論での説明にいたる理由としては、日本臨床心理士会の倫理綱領の第2条の「秘密保持」の部分と公認心理師法の第四章 義務等「秘密保持義務」と、「職業倫理の7原則」の「秘密を守る(第5原則)」という内容が関係してくるものになります。
以下に、詳細を引用いたしますね↓
1 秘密保持
業務上知り得た対象者及び関係者の個人情報及び相談内容については,その内容が自他に危害を加える恐れがある場合又は法による定めがある場合を除き,守秘義務を第一とすること。
~一般社団法人日本臨床心理士会倫理綱領より一部抜粋にて引用~
👆日本臨床心理士会の倫理綱領の第2条の「秘密保持」より
(秘密保持義務)
第四十一条 公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。
~公認心理師法(厚生労働省サイト)より一部抜粋にて引用~
👆公認心理師法の第四章 義務等「秘密保持義務」より
金沢(2006)による「職業倫理の七原則」
第1原則 相手を傷つけない、見捨てない
第2原則 専門的な行動の範囲内で、相手の健康と福祉に寄与する
第3原則 相手を利己的に利用しない。多重関係を避ける
第4原則 一人ひとりを人間として尊重する
第5原則 秘密を守る。秘密保持
第6原則 インフォームド・コンセントと相手の自己決定権の尊重
第7原則 全ての人を平等に扱い、社会的な正義と公正・平等の精神を具現する
~臨床心理学雑記より一部抜粋にて引用~
👆臨床心理学雑記 職業倫理の七原則|公認心理師より
親として守秘義務について思うこと~自身が相談者だったらこう思う~
障害(自閉スペクトラム症、中度知的障害)をもつ娘(4歳)を育てていると思うこととして、
『いつか娘も、親の知らぬところで【死にたい】とか、それに近しいリスクの高い行為をしてしまうのかもしれない・・・その時は、どこまで娘の気持ちを尊重できるだろうか』
というものがあります。
今は天衣無縫にのびのびと過ごしている娘ですが、成長するにつれて今よりも複雑な悩みをもつことになるでしょうし、その時は周囲の相談場所を頼っているかもしれません。
心理職として、守秘義務の範囲は理解しているつもりですが・・・いざ、相談者側の立場になった際は、果たしてどこまで冷静にいられるだろうか?、とふと頭をよぎることもあります。
”もし、そうなったら・・・どう動くか?何ができるか?”という、その時に役に立つ知識をこれから、少しずつでも身につけていきたいと強く感じました。今、自分に出来る精一杯はこれくらいかもしれないな、とも思います。
まとめ
今回は、『こんな質問をよくうけますシリーズ』の第5弾ということで、心理職の守秘義務についてご紹介させていただきました。
守秘義務のあり方を考える転機となったタラソフ判決の情報のご紹介も含め、自傷他害の場合の内容とそれ以外の内容への応対も、具体的なフレーズ例もあげながらお伝えいたしました。
「カウンセリング?そこで話した内容って、どの程度守られるの?」
「守秘義務って、なに?」
といった疑問には、何かしらの解決のヒントを提示出来ていればよいなぁ・・・というのが率直な感想です。
- 同じ子育て時間、折角過ごすならストレスレスでいたい!
- 子育てを通して、親である自分も成長できたらなと思う
- なかなか解決できない問題って子育てにはあるよね?
- みんなはどうやってストレス発散してるの?
- みんなは自分と同じことで悩んだりするのだろうか?
などなど・・・
☞障害の有無関係なく、ひとりひとり個性をもった子ども達を育てている親御さんにとって、『毎日大変だけど…子育てって、楽しいこともあったりするな』、『私たち頑張ってるよね~』、と思える体験をこのブログを読むことで、少しでもよいのでしてもらえたら嬉しいですね***
ではでは、またお会いしましょう~!
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